答えを探している


 

 

いつもの通りに、押し倒す。

そのまま静かに時間が過ぎるはずだった。

 

 

「いつまで乗ってるんだ!」

どっ。 鈍い音がした。

 

「く…」

明らかに隙を突かれた左近は腹を押さえた。

 

「ははっ…」

綾之介は思わず笑みが漏れる。

「初めておまえに一発入れられたぞ」

 

しかし、左近を蹴った脚は足首を掴まれて、

そのまま上へ持ち上げられ、

左近の肩に掛けられた。

 

 

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もう左近には

綾之介はひとりの女にしか

見えない。

 

他の者がいる時はともかく、

二人きりの時には

迷わず口説きにかかる。

 

(男女とは秘密を持つものだ。

できるだけたくさん、

二人だけの会話と、秘密を。

 

まして柔らかな肌を抱き締めれば、

それだけでどんなに癒されることか。)

 

(男の姿形は偽り…正体は女

それがこやつの弱み)

 

左近の色ごとは、

深い優しさを保ってはいるものの、

常に策略めいていて静謐。

 

まごころをぶつける、などという

言葉とは遠いところにある。

 

(…なぜ俺はそんな恋しかできぬ…?)

 

 

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(なんでこいつとはいつも

色めいた雰囲気にならんのだ…。)

 

蹴られた鳩尾が痛む。

「利かん気の強い性質の女だ」

 

癪に触って強引に身体を重ねた。

綾之介は組み伏せられながらも、

得意げな視線を送る。

 

左近が自分に不覚をとったことは、

こんなことでは拭えない…と。

 

(…小癪な…)

俺の愛撫より満足そうな顔をしおって。

 

左近も怒るよりなんだか可笑しくて、

2人は子どもがじゃれるように戯れた。

 

 

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得られるはずのない答えを探している。

 

この世でたったひとりの、

誰かを捜している。

 

 

 

 


 

2017.08.01 脱稿 (18.1.6加筆)

(無断転載禁止:雪独楽)